なぜ円安方向に動く?

 [2013-1-5] 今日は、新年を迎えてから投資家の間で大きな議論の的となっている、なぜ円安方向へと為替相場が振れているのか?と言う事を考えてみたいと思います。

 まずは、現在どれほど円安相場へと為替相場が振れているのかをドル円の日足チャートを見て頂きたいと思います。

2013年1月5日 月足ドル円

 恐らくほとんどのトレーダーは毎日この日足チャートを見ておられるので、見慣れたドル円の日足チャートかも知れませんが、RSI等のオシレーターを使われている方にとっては現在の相場が異常なものに見えている事かと思います。(RSIについては、RSIオシレーターとは?を参考にしてください)

 このようにドル円相場が急激な上昇をしている理由として、まず一番大切なのは日本とアメリカの通貨の関係になる訳ですが、ここで今まで円高要因となっていた最大の理由を考える事から始めたいと思います。

 日本の円を買っていた最大の買い手は誰か?これは良くアナリスト等が口を酸っぱくして語っている正に教科書的な回答になりますが、それは日本の輸出系の企業です。

 輸出系の企業は海外で商品を売った代金を円へと両替をして、従業員の給料や材料費の支払い等にあてる必要があります。

 つまり、海外で商品が売れれば売れるほど、給料や材料費、その他下請などに支払う金額が大きくなる事になります。それは沢山外貨を売って円を買う必要がある事を意味します。

 では、その輸出の儲けについてですが、こう言う時に使うのが貿易収支です。(日本の貿易収支について貿易収支(通関ベース)の推移)

 実は、この貿易収支がマイナスに転落しており、輸出よりも輸入が多い状態となってしまっているのです。それはつまり、日本の輸出大国としての地位を失っている事になるのですが、同時に円を買う輸出業者よりも外貨を購入する輸入業者の割合の方が多くなっている事を示しています。

 「最大の売り手がいない」と言うのが円安方向へと動く相場に大きな要因となっている事は間違いないと考えられます。

 例えば、決算時期が近づいてくると、企業が事前に発表している想定為替レート付近では「この辺りで輸出企業の売りが入るだろう」と言う憶測の元に投機筋が売り仕掛けをしていましたが、それができなくなります。

 さらには、円高からの海外企業の買収(M&A)も重なる事で円安方向へと振れた事が考えられます。

日銀の総裁交代と円安要因

 さて、もう1つの円安い要因と言うのは日銀総裁の交代の話ですが、現在の日銀総裁は白川氏が務めていますが、このブログ内でも白川氏について書いてきましたが、この方の根本にある考えは「金融緩和では無く金利でインフレ率が変わる」と言うものです。

 過去には「景気・物価に対する刺激という点で中心的な効果は時間軸効果であり、量の拡大はほとんど効果を発揮しなかった」と言う発表もしているのも、その考えが元となっているように考えられます。(白川氏の過去の発言については白川方明日銀総裁の過去の発言集を参照にしてください)

 つまり、このように金融緩和に対して少し奥手の白川氏を変え、安倍総理大臣のように攻めの金融緩和をするタイプの総裁が選ばれるとするならば、それは海外ファンド勢も売り込みにいきにくい展開となる事が考えられます。

 他の円安材料として、アメリカドルの財政の崖の解決や欧州問題の安定などを上げているアナリストもいますが、実質投資家の目は既に債務上限引き上げに推移している事を予め覚えておきたいところです。

 もちろん、債務上限案がすんなりと通るとは考えにくいので、これは円高材料となってきますが、まだ上限引き上げまで切羽詰っている状況でないと言う点が円安方向へと振れている理由となるでしょう。

 次は、キャリートレードの加速についてですが、円がこれから長期に渡り緩和状態を継続するとの思惑から、円を借りて多通貨を買うと言う動きに投資家が出始める訳ですが、そのキャリートレードの加速もまた円安要因となっています。

 このキャリートレードは諸刃の剣ともなる可能性があるので、先進諸国の中央銀行総裁クラスは幾度となく過去に危険性を述べている事も頭に入れておきたいことです。

 ここまで、色々と円安要因について書いてきましたが、根本の理由となっているのが安倍氏が推し進めるデフレ脱却がメインとなって動いている訳ですが、実際に将来のインフレ率についてどのように市場が考えているのか?を見て終わりにしたいと思います。

2013年1月5日 日本インフレ連動国債利回り推移

 上は日本のインフレ連動国債の利回りの推移となっていますが、昨年5月の利回りを上抜けて推移している事が分かります。

 この利回りについて考えてみると、昨年5月~6月のドル円相場は77~81円での推移で、有った事を考えると、インフレ連動債が円安の動きに驚いて為替相場を追撃しているようにも思います。

 さて、もう1つの考え方として、これまで日銀は1%のインフレ目標を持って行動をしてきた訳ですが、安倍総理は2%を想定しています。

 つまり、このインフレ率の推移を見ていると、まだまだ金融緩和ができるようになっている事が分かります。これは50兆円規模の金融緩和が更にできることを安易に想定できます。

 さて、今日は長々と余りおもしろくない話を書いてみましたが、7日は少し売りから入ってみたい気持ちでおります。その話については明日また更新させて頂ければと思います。