米導入の連鎖式CPIとは

 [2013-4-6] 本日は相場がお休みと言う事で、普段はドル円についての動きを紹介していますが、アメリカが社会保障給付金に連動させることになった「連鎖式CPIとは一体どういうものなのか?」について書いていきたいと思います。

 CPIとは「消費者物価指数」の事で、毎月米政府によって発表されている、物価動向を示す重要な経済指標の1つです。「アメリカのCPI推移グラフへ

 しかし、今回話題となっているCPIと言うのは、「連鎖式CPI」で普通のCPIとは少し考え方が違うので注意が必要です。

 それは、普通のCPIの場合には全て一括で物価の動向を決めている訳ですが、「連鎖式CPI」と言うのは、物価変動の影響で消費者の需要が変化するため、「その行動を考慮しない限りは消費者の感覚に近い物価指数は得られない」と言う考えの元で考えられた物価指数です。

 この連鎖式のCPIについて、日本の総務省のホームページでは以下のように解説されています。

 例えば、類似の品目で、どんどん価格が下がるもの(A)と、あまり価格に変化がないもの(B)とがあった場合、消費者は、BよりもAの方を買うようになると考えられます。ということは、Aのウエイトは大きくなり、Bのウエイトは小さくなります。基準改定に当てはめて考えると、ウエイトを改定することによって、価格下落が大きいものの比率が大きくなるわけですから、CPIの変化率は、旧基準のウエイトで計算した場合に比べて、小さくなる方向にシフトすることになります。

 新基準による消費者物価指数(CPI)について(総務省ホームページ)

 総務省の説明は非常に分かりやすい内容となっていたのですが、これをもう少し具体的に紹介すると、例えば、牛肉と豚肉の場合、この二つは代替えができる「類似の品目」だと言えますが、ある日牛肉の値段が急激に上昇したとします。

 この場合、多くの人は牛肉の高騰を受けて、牛肉よりも安価な豚肉の購入する機会が増え、それは牛肉よりも豚肉の消費のが多いと言う事になります。

 そこで、連鎖式CPIの場合には、大きく価格上昇した牛肉よりも豚肉の方が需要が高いため、牛肉に係る物価上昇よりも需要の高くなった豚肉の物価をより優先して消費者物価指数を出す事になります。

 つまり、価格が上昇した品目については需要が落ちる事が考えられるため、物価が上昇しない、もしくは下落した品目を中心に消費者物価指数を計算する事になります。

 この連鎖式CPIについて多くのアナリスト達は、消費者の物価を示す意味でより正確なデータだと評価する方もいらっしゃいますが、実際、物価上昇が起こった品目に対して「その商品は売れなくなるだろう」と考えられ、その品目の物価上昇を軽視する危険性があります。

 例えば、先の例の場合には豚肉と牛肉を例に出しましたが、宗教によっては豚や牛が食べられれないと言う方もいらっしゃいます。

 その中で、豚肉の価格だけ急上昇した場合、牛肉へとシフトできない消費にとっては大問題です。

 また、反対に物価が下落した場合には、その商品が売れる事を示唆し、その商品がCPIに与える影響が大きいと考えられ、重要視されます。

 つまり、連鎖式CPIは物価の下落について反応は速いですが、物価上昇について、「反応が遅い」と言う可能性を秘めている可能性があります。

 また、連鎖式CPIを元に社会保障給付金を連動させると言う事は、物価上昇に反応が鈍いため、そのまま支払いが少なくなる事を意味しています。

 現在のような大規模金融緩和状態で、後ろにいつもバブルと言う影を背負っている中、この連鎖式CPIは向いていないのではないか?と思うのは私だけでは無いのかも知れません。