シリア米単独行動で相場は

 [2013-8-30] これまで米国と足並みを揃えシリアの化学兵器使用問題について批判し、“最も好戦的な発言を出していた”イギリスが、英軍のシリア軍事介入への参加に道を開く政府提出議案の否決を受け(13票差)、事実上、軍事行動は起こさない事になりました。

 否決後、英キャメロン首相は、「イギリス議会が軍事行動を望んでいないことがはっきりした。政府はその意向に沿って行動する」と発言をし、イギリスがアメリカと歩調を合わせる事は無い事を表明しています。

 これにより、続いて浮上してきているのが“アメリカの単独行動でのシリア攻撃”ですが、アメリカのNSC(国家安全保障会議)の報道官は「オバマ大統領は最大の国益に基づいて判断する。国際規範に違反する国には責任を取らせる必要がある」と発言を出しています。

 つまりは、オバマ大統領の決断が迫っている事を意味する事になっている訳ですが、ケリー国務長官は、議会の指導部にシリアに対する軍事行動における理解を得るため、アサド政権側が化学兵器を使用したと断定した根拠について「政府高官の通信を傍受した」「化学兵器攻撃の準備を確認した」などの証拠を提出したとの報道がされています。

 また、国連のシリア調査団が引き上げる日程は“8月31日まで”とされている事から、日本時間深夜にも何らかの発表が行われる可能性が高く、その発表によっては数日中にアメリカによる単独攻撃の可能性を示唆している状況となっています。

 このニュースによって、ロシアに亡命中のエドワード・スノーデンが告発した、“米当局の個人情報収集活動”に対する“米政府の正当性”を示す意味合いも含まれている可能性が有る事から、単独行動に移り“正義論”を出す可能性も考えられるため、“単独だから動かない”と言う考えは、マーケットを追う者としては可能性を保有する意味でも“決め打ちしないように”と捕えています。

ドル円2013年8月29日チャート4時間足

 上は、先日私が作成したドル円の4時間足チャートですが、98円前後に用意されていた輸出系からの売り(98.3がメイン)やアジアソブリン系からの売りをこなし、完全に上抜ける展開となっています。

 その陰には、米GDPの数値が予想よりも良かった事が影響していますが、98.50のストップを明確に刈り取りきれずに上値を伸ばせなかった最大の要因は、やはり「米軍がシリア攻撃を行うのでは?」と言うマーケットの詮索からだと考えられます。

 ただ、この流れを考えるに当たって、「戦争ができない(戦争をしない)オバマ」のイメージは何処に行ってしまったのか?と言う個人的な思いもある訳ですが、ビンラディン氏暗殺辺りから変わり始め、現在支持率が低下している中で、何か行動を起こす必要が有るオバマ陣営からすると、週末に動きが激しくなる可能性も否定できないため、本日は月末ドル需要と重なり、ポジション調整が激しく行われる事を想定しています。

 また、近いところでは、キプロス債務問題時のような、ニュースに一挙手一投足するようなトレードを想定しておけば、このマーケットは乗り切れると今は判断でしています。

ドル円4時間足のチャート

 以下が本日のドル円4時間足チャートです。

ドル円2013年8月30日チャート4時間足

 基本的にはレンジ相場となっているのが一目瞭然なのですが、今週中には材料が無ければ中々ブレイクがしにくい展開となっている事が分かります。

 マーケットの意向としては、上トレンドラインをブレイクするのが大筋と言えるところですが、現在のところ中々難しい展開となっている事から、来週に持ち越す形となっています。

 その上で、日足レベルでの三角持合いと言う展開を考えるのであれば、やはり基本はブレイク失敗に対する逆ブレイクを想定する事が基本目線となる事から、下方向へのブレイクが望ましい展開になっているように考えています。

 そうするならば、何が引き金になるのか分かりませんが、来週は材料がただでさえ盛り沢山となってしまっている上に、発言ニュースへの影響力が出てきてしまうと、市場は大荒れ必死となりそうです。