オランドが乱すユーロ

 [2013-2-16] 今日は、相場がお休みですので、先週までの流れについて、私自身の復習を兼ねて頭の中を組み立てていきたいと思います。

 そこで、個人的に注目している人物オランド氏の発言に注目しつつ流れを追いかけていきたいと考えています。

 まず始めに、オランド氏の事をご存じでしょうか?

フランス大統領オランド

 『フランソワ・オランド(フランソワ・ジェラール・ジョルジュ・ニコラ・オランド)は1954年生まれのフランスの政治家で、フランス共和国第五共和政第7代大統領及びアンドラ公国の共同大公』
参照:フランソワ・オランドの発言・ニュース

 このオランド氏は、前職のニコラ・サルコジに選挙で勝利しフランスの大統領となった訳ですが、このオランド氏の最近の発言には少し「?」となる部分があります。

 [2013-02-05]「ユーロ圏には為替政策が必要だ」

 [2013-01-29]「ユーロは重要な水準にある」

 上は、オランド氏の発言から抜粋したものとなりますが、オランド氏は少し回復の兆しを見せつつあるフランス経済に対して、輸出の増強を狙っての安いユーロを望んでいます。

 それを証明するかのように、フランスの財務相モスコビシ氏からは、

フランス財務相モスコビシ

 [2013-02-04]「ユーロはある意味では強過ぎるかもしれない」

 と言う発言が飛び出しているなど、自国の経済成長には弱いユーロが必要だと言う事をアピールし続けている状態となっています。
参照:ピエール・モスコビシの発言・ニュース

 弱いユーロの影響で大きな経済成長を手に入れたドイツに対して、当時ショックでのダメージがぬぐい切れていなかったフランスは強い経済成長を手にすることができませんでした。

 そのため、少し欧州債務問題が収まりつつあり、上向きの経済成長が期待できる今だからこそ、弱いユーロによってフランス経済に対して加速度的な力を与えようとしているのです。

 例えば、昨年2012年8月に、フランスは安い韓国ウォンを追い風にして世界シェアを伸ばしていた韓国自動車産業に対して、「EUに韓国車の輸入規制を要求」するという事がありました。

 フランスのプジョーやルノーが安い通貨ウォンの影響を受けて苦しんでいた為、そこから脱するための手段で、「韓国車産業は労働基準法が守られいないから安い」と発言が出るなど、あの手この手でフランスの自動車産業を守ろうとしてきました。

 つまりは、昨年もダメージがあり、更に、ウォンが上昇を始めた中で、「今年こそはフランスが!」と言う強い思いの中で、日本のアベノミクスを受けての円安進行、その円安進行を受けてのユーロ高。

 「このままでは、フランスの産業が打って出る機会を失ってしまう」との考えの元、色々とユーロについての発言が飛び出してきている訳ですが、このフランスの発言が行き過ぎだと言う発言がだんだんと大きくなってきている可能性があります。

オランド発言の行き過ぎ

 オランド氏は先日このような発言を出しています。

 [2013-02-09]「ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の発言はここ数日、ユーロの下落に効果的だった」

 これは、為替に対して政府が入ってくると言う、フランス、ユーロに対して『為替操作国』を意識させてしまうような非常に重要な発言です。

 今まで、日本が単独で市場介入を行ってきた事に対して「為替操作だ!」と批難してきた欧州諸国にとっては、ましてや欧州連合のトップ国であるフランスから、このような為替操作をイメージさせる発言が出たら非常に不味い訳です。

 この発言に対して発言対象となったドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は、

マリオドラギECB総裁

 [2013-02-07]「(オランド・フランス大統領が提唱した為替政策について)ECBは独立している」「口先介入の効果を最終的に判断するのは市場である」
[2013-02-13]「ユーロに関する一部のコメントは不適切で意味がない」「ユーロのレートは長期的な平均前後にある」
参照:マリオ・ドラギの発言・ニュース

 と言う風に、「おい、イランことを言うな」とも言いたいような発言が出ている事が分かります。

 ここで大事になってくるのは、このようなフランスの状態に対して、一方、もう1つの欧州トップ国であるドイツの反応は?と言うと、実は、少し高めのユーロ設定を望んでいる状態です。

 ドイツ国内において、CPI、つまりインフレ率が2%近辺となっており、これから景気が回復していくのであればドイツ国内においてバブルとなる可能性が増大してきます。

 その点を考慮すると、少し高めのユーロに設定する事で、国内のインフレ率の上昇を鈍化させる事ができます。

 昨日、バイトマン独連銀総裁は「ユーロの為替レートは概ねファンダメンタルズに沿っている」と、ユーロのレートに対して問題無いと言うアピールをしています。

 バイトマン氏はECB内において発言力の弱いドイツ状態に対してイライラがつのり、「辞任するのでは?」と言う噂が数か月に1度出てきています。

 バイトマン氏が辞任すると、「また、ドイツの総裁か・・」と言うマーケットの考えが生まれる事が想定されます。

 現在、欧州諸国は弱い経済状態の国が多くあり、経済が安定している国が支えている状態で、経済が弱い国が多いため、弱い国の意見が通りやすいと言う何とも言い難い状況です。

 今回、言い過ぎ気味であったオランド氏の発言に対して、「言い過ぎは良く無いよ」との周りからの仲介が入っているようにも考えられるG20。

 今後、マーケットの焦点は、ユーロの為替レートを巡っての欧州内での戦いが起こる可能性も否定できませんよね。