市場と地方経済の雑談

 [2013-12-14] 本日は、マーケットがお休みの土曜日と言う事で、明日、マーケットの戦略について書いてみる事にして、本日は、いつもの土曜日のように個人的な雑談をベースに書いてみたいと思います。

 先日、魚介類の加工業者の社長さんとお話する機会が有り、日本の魚介類の卸価格についてのお話を聞く事が出来ました。

 その時、社長さんがおっしゃるには、「漁獲高が落ちている割には卸価格の上昇が見られていない」とおっしゃっておりました。

 日本の全国CPI(前年比)のデータについて、前年比ベースで1.1%増と言う結果になっているマーケットデータとは違い、魚介類の価格高騰が起こらない現状に対して、個人的には疑問の念を感じつつ伺っていると、どうやら「日本国民の食事に対する変化が価格高騰へと繋がらない可能性が高い」との事でした。

 つまり、魚介類を食べなくなった事による需要の低下が、供給の低下よりも進み価格の高騰が見られず、価格の高騰が起きない事は漁師に懐を圧迫し、漁師の懐が圧迫されると言う事は、漁師になる後継者が出てこない事に繋がっているそうです。

 そのため、私の住んでいるような田舎では、後継者不足から漁師の大半は70歳を超える方々ばかりとなっており、さらに、毎年1人2人は、年齢によるものも有り「漁に出たきり帰って来ない」と言う状況となっているそうです。

 また、漁業権についても、「後継者不足から他の漁場を持っている漁師に売ってしまう」もしくは「他の漁師にレンタルしてしまう」と言う事が起こっているそうです。

 こうした現状から漁業の先細りが起こっており、最近では円安の影響を受けての燃料費の高騰が重く、今後の課題が浮き彫りとなっている状況のようです。

 次に、魚の問屋産業の目線から見ると、特にバブル期の頃には繁華街との専売契約と呼ばれるシステムが有り、接待を対象にして「今日取れた最高の魚を持ってきてくれ」と言った注文が引っ切り無しに有ったそうですが、現在ではそうした注文は完全に無くなってしまっており、「接待における料理(最高の1品でもてなす)と言う概念まで無くなってきているのでは?」と言う話まで伺いました。

 続いて、大手スーパーなどが築いた魚の流通ルートの拡大による地方漁師産業の衰退についてですが、大手スーパーが最新の流通経路を確立した事により、新鮮な魚を日本中どこでも運ぶ事ができるようになりました。

 特に、最近ではスーパーでサンマの刺身などが販売されるようになりましたが、“アシ”が早く(古くなるのが早い)、水揚げ時にコンテナに大量に詰められる状況では、重さから身を潰してしまい、刺身としては販売できない状況になっていたものが、新たに確立された水揚げの方法と仕分け作業の機械化による効率のアップから、都会でも食べられるように変化してきたそうです。

 そのため、完全に整備された流通経路を持っていない地方漁師達は、地の魚ばかりを食べてくれていた地元消費者が、他の産地で取れた魚を食べる機会が増えた事により、地の魚を食べる機会が減り、それはそのまま漁師達の経済状況へと打撃を与えていると言う事でした。

 日本経済がアベノミクス等で盛り上がりを見せ始めている中で、既に失われた20年と呼ばれる現在の状況で、今回は魚の話でしたが、恐らく中小企業にとっては、既に懐が厳しい状況となっているところは沢山あるでしょう。

 そう言った企業が今後どのように復活して来るのかは企業努力となってくると思いますが、そう言った地方産業の下支えが無い上で、GDPが伸びたや伸びなかった、CPIが伸びたや伸びなかったと言うのは、マーケット参加者だけの企業の空論なのだな・・と思う今日この頃の私です。

 マーケットでは「木を見て森を見ず」と言う格言がありますが、実際の市場では「もっと葉や茎などを見る事から木を理解する事が必要」なように感じ始めています。