米雇用統計の動きで葛藤

 [2013-11-9] 先日のマーケットは米雇用統計の強い結果を受けて(参照:米雇用統計の推移とグラフへ)、急上昇したドル円に対して果敢にも(無謀にも(笑)?)売りで挑み、1勝2敗で結果お昼ご飯代を稼がせて頂きました(涙)。

 木曜日のあの下げに乗れていなかったら今週はどうしようか?と思えるような一週間となった訳ですが、先々週でしたか?の負けもしっかり取り返しお釣りがくる1週間となったので、個人的に満足する事ができたトレードとなりました。

 さて、本日はマーケットがお休みと言う事で、昨日のマーケットについて振り返ってみたいと思うのですが、実は、強い米雇用統計の陰で有ったマーケットの葛藤の部分を本日は個人的な解釈を持って紹介してみたいと思います。

 まずは、集めてみた以下の3つのチャートをご覧ください(今週5日のデータ)。

金相場(商品先物)

金相場2013年11月9日(5日間)

 金相場は順調に切り下がりの5日間となっており、これは米量的緩和の縮小を示唆した動きとなっており、欧州債務問題の鎮静化も影響した結果のように考えています。

米国債利回り(10年債)

米国債利回り2013年11月9日(5日間)

 米国債利回りについては米雇用統計の強い結果を受けて急上昇をし、これもまた債務上限問題や米政府閉鎖問題等の影響懸念が無かったアメリカについての安堵感から国債売りが出たと考えられます。

米ダウ(株式相場)

米ダウ株式相場2013年11月9日(5日間)

 続いて、米株式相場ダウについてですが、史上最高値を更新するなど非常に慌ただしいマーケットとなりましたが、引けにかけての急反発が起こっている事が分かります。

3つのチャートが示すもの

 さて、上の3つのチャートが示すものとして、最も目を引くのは、やはり米国債(10年国債)の利回りの急上昇の部分になるかと思うのですが、何と、雇用統計を受けて1%以上も利回りが上昇すると言う恐ろしいほどの動きとなりました。

 為替相場、特にドル円について考えてみると、これほどの上昇が米国債で起きているにも関わらず、比較的安定した動きとなっている事の方が驚きと言えるでしょう。

 また、最終日に限って3つのチャートに注目して頂けると分かりますが、「金売り」「米国債売り(利回りは上昇)」「米株買い」と言う、まさにリスクオンの展開となった事を受けたことが、「ドル円が引けにかけても強かった理由」だと考えておいても良いと思っています。

 しかしながら、本日注目してみたいのは、上の3チャートについて5日間と幅広くとらえたものでは無く、米雇用統計時の反応について考えたものです。

 そこで、少し強引では有りますが以下3つのチャートを重ねたものが有りますのでご覧ください。

金・米国債利回り・米ダウ相場

金・米国債・株式相場2013年11月9日(5日間)

 少し分かり難いですが、金相場と米国債が米雇用統計の影響を受けて急激に(一方通行で)反応を見せている事に対して、米株だけは躊躇を見せてから上昇している事が分かります。

 これは、昨日発表された雇用統計の結果が20万人オーバーの+20.4万人となったためで、マーケットは米金融緩和からの撤退を意識した事によるものだと考えられます。

 つまり、「雇用統計の良い結果 ⇒ 米政府問題の影響なし ⇒ 米経済の回復を示唆 ⇒ 米株買い」と直ぐに反応をする事ができず、「雇用統計の良い結果 ⇒ 米政府問題の影響なし ⇒ 米経済の回復を示唆 ⇒ 量的緩和縮小 ⇒ 米景気後退を示唆 ⇒ 米株売り?」と考えたトレーダーが多かった事が想定されます。

 これがどういう事かと考えると、史上最高値付近で推移している米株に対して、問答無用で買い進める事が難しくなってきており、下手をするとドルジャブ状態の経済が、量的緩和による過剰投与に依存してしまっている事を示しているようにも考えられます。

 もう少し噛み砕いて紹介すると、今後、量的緩和が縮小されるのは間違い無いことなのですから、その縮小が始まった後で、強い米指標が出た場合においても、それは量的緩和縮小、さらには将来の引締め政策に繋がるものになります。

 つまりは、米指標の強いデータが米株の売りへと反応を見せる切っ掛けとなってしまう可能性が十分に考えられます。

 FRB議長であるバーナンキ総裁が、一時タカ派の発言をした事により米株が大幅に下落しましたが、それと同じ状況が起こりうる可能性が見いだされ、強いて言えば強い経済成長を見せれば見せるほど、アメリカの失速感が出る事を意味するのかもしれません。

 そうなってしまうと、反応が比較的容易な米国債のみが売り叩かれてしまい、株価は下落と言う状況になり、ドル価値上昇示唆による金売り、さらには新興国通貨売りの米ドル買いへと繋がり、本来リスクオンとなるべきところが米ドル一遍等のマーケットへ変わり、それは結果的にデフレを招くのでは?と言う考えも頭に過ります。

 株安の通貨高のデフレは日本が経験し、経済が如何に疲弊したかを良く知っています。

 恐らく来年から始まるであろう米量的緩和の巻き戻しのタイミングは、難しくなるばかりなのかも知れません。